
降格された星が、9年越しに微笑んだ。
冥王星のハート:降格された星が9年越しに見せた素顔 2015年7月、人類は初めて冥王星の「顔」をはっきりと見ました。そ…

YouTube Shorts
記事本文
今夜、街明かりの届かない場所で空を見上げれば、星々は静かに、永遠のように輝いています。しかしその空は現在も、ある巨大な天体に向かって引き寄せられつつあります。40億年後、その結果がどのような夜空を生み出すのか。物理法則が示す未来の光景を、順を追って整理します。
天の川銀河には約2,000億〜4,000億個の星が集まっており、その直径はおよそ10万光年とされています。光の速さで端から端まで10万年かかる広がりです。
その隣に位置するのがアンドロメダ銀河(M31)です。秋の空にうっすらと広がるこの天体は、肉眼で見える最も遠い対象のひとつで、距離は約250万光年。現在私たちが目にしているアンドロメダの光は、250万年前に放たれたものです。
20世紀初頭、天文学者たちは宇宙の大半の銀河が地球から遠ざかっていることを突き止めました。光源が遠ざかると光の波長が引き伸ばされて赤く見える赤方偏移が観測されたのです。これが「宇宙は膨張している」という現代宇宙論の出発点となりました。
ところがアンドロメダ銀河の光は、他の銀河とは逆に、わずかに青くずれていました。これを青方偏移といいます。光源が近づくと波長が縮んで青側にシフトする現象です。
アンドロメダは宇宙の膨張に抗い、秒速約110kmで天の川銀河に向かって移動しています。1時間あたり約40万km、地球と月の距離を1時間ほどで詰めてしまう速度です。エドウィン・ハッブルらがこの事実を確認したとき、「変わらない夜空」という直感は根拠を失いました。
「銀河が衝突する」と聞くと、星と星がぶつかり合う激烈な破壊を思い浮かべるかもしれません。しかし実際の過程は、それとは大きく異なります。
銀河の内部はほとんどが真空です。太陽から最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリまでの距離は約4.2光年。太陽をビー玉の大きさに縮小すると、次のビー玉は数百km先に置かれる計算になります。それほど星はまばらに分布しています。
したがって2つの銀河が衝突しても、個々の星が直接ぶつかる確率はほぼゼロです。星々は互いの重力に引かれながら軌道を乱され、再配置されていきます。衝突というより、2つの巨大な重力場が互いに貫き、絡み合うプロセスといえます。
ただし「穏やか」という意味ではありません。天体の位置によって重力の強さが異なることで生じる潮汐力により、両銀河の腕は引き伸ばされ、何十万光年もの長さに及ぶ星の流れ(潮汐流)が宇宙空間へと放出されます。
また、銀河内に漂っていたガス雲が衝突の圧力で圧縮されると、急速な収縮が起き、大量の星が一斉に誕生するスターバーストと呼ばれる現象が生じます。高温の青い巨星が各所で輝き、超新星爆発が繰り返される。そのような夜空は、現在とは根本的に異なる様相を呈するでしょう。
ハッブル宇宙望遠鏡のデータをもとにした2012年のNASAのシミュレーションは、この過程を次のように描き出しました。
40億年後の地球の空には、傾いた巨大な銀河の円盤が広がり、その明るい中心核(バルジ)が無数の星に縁取られて見える、とシミュレーションは示しています。
融合後に誕生する新しい銀河は、天の川(Milky Way)とアンドロメダ(Andromeda)を組み合わせてミルコメダ(Milkomeda)、あるいは「ミルクドロメダ」と呼ばれています。
両銀河の中心にはそれぞれ超大質量ブラックホールが存在します。天の川の中心にある「いて座A*」は太陽の約400万倍、アンドロメダ中心のものは太陽の約1億倍以上の質量を持つとされています。
融合の過程でこの2つはやがて互いに接近し、軌道を回り、最終的に合体すると考えられています。その際、時空のゆがみが波として伝わる重力波(質量を持つ天体が時空を歪めながら運動することで生じる波)が宇宙全体に放射されるでしょう。ただし、この合体がいつ・どのように起きるのかは、まだ精密にはわかっていません。
ここで近年の研究に触れる必要があります。従来「ほぼ確実」とされてきた正面衝突が、実は確実ではない可能性が出てきたのです。
2024年から2025年にかけて発表された複数の研究は、ESA(欧州宇宙機関)の位置天文衛星ガイアによる観測データを再解析しました。アンドロメダが視線方向だけでなく、空を横切る方向にどれだけ動いているか(固有運動)を考慮し、周辺の小さな銀河の重力的影響も加味したシミュレーションを繰り返した結果、今後100億年以内に正面衝突する確率は約50%程度にとどまるとする推計が示されました。
つまり、すれ違うだけでしばらく衝突を回避するシナリオも十分にあり得ます。観測精度が上がるにつれ、「確定した未来」とされていたこの衝突は、むしろ不確かさを帯びつつあります。
では40億年後、この光景を人類は目撃できるのでしょうか。
現在の科学的理解によれば、それはほぼ不可能です。太陽は約45億年後に水素燃料を使い果たし、外層が膨張する赤色巨星へと変化します。その大きさは地球の軌道に達するほどとされており、地球の海が蒸発し生命の維持できる環境が失われるのは、それよりずっと前、10億〜数十億年後のことと考えられています。
40億年後の夜空を見上げる知性体が地球に存在している可能性は、現時点の知識では低いと言わざるを得ません。
整理すると、現時点でわかっていることと、まだわかっていないことは次のように区別できます。
確認されていること
まだ不確かなこと
アンドロメダの青方偏移が最初に記録されてからおよそ100年、観測技術の向上は「わかったこと」を増やすと同時に、「単純すぎた見通し」を修正し続けています。250万年前の光を解析し、秒速110kmの接近速度を測り、40億年先の銀河の形をシミュレートする——その作業が今も続いており、答えはまだ更新の途中にあります。
参考・情報源
本記事は、以下の公的機関・専門機関が公開する観測データや研究成果を参考に、 編集部が制作しています。最新の研究状況や一次情報については、 各機関の公式サイトもあわせてご確認ください。
※ 当サイトの内容の正確性には万全を期していますが、 科学的知見は日々更新されます。最新かつ正確な情報は、上記の一次情報源をご確認ください。 編集方針の詳細は編集方針・運営者情報をご覧ください。
未知なる宇宙科学 ARCHIVES 編集部
NASA・ESA・JAXA・国立天文台などの公的機関が公開する観測データや研究成果をもとに、 宇宙科学のテーマをわかりやすく編集・制作しています。内容に誤りを見つけられた際は、 お問い合わせよりご指摘ください。
Related
おすすめの宇宙観測YouTube Channel
この記事が役に立ったなら、チャンネル登録を
新着ショート動画をいち早くお届けします。