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夜空に見える星のほとんどは恒星です。自ら光を発し、周囲に惑星を従える存在。しかし宇宙には、どの恒星にも属さず、光のない空間をただ漂う惑星も存在します。「浮遊惑星(Rogue Planet)」と呼ばれるこの天体は、以前から理論上の存在として知られていました。ところが近年、この浮遊惑星が「二つ一組」で見つかるという、これまでの惑星形成理論では説明のつかない発見が報告されています。
私たちが学校で習う太陽系の姿は明快です。中心に恒星があり、その重力に捕らえられた惑星が軌道を描いて回る。地球が太陽を1年かけて一周するように、惑星は必ず「親」である恒星に従っている——そう考えられてきました。
浮遊惑星は、その枠組みに収まらない天体です。どの恒星にも重力的に束縛されず、銀河空間を単独で漂います。英語で「Rogue(はぐれ者)」と呼ばれるのも、こうした性質からきています。
その成因については、現在二つの説が有力とされています。
一つは追放説です。惑星系が形成されるとき、複数の惑星が互いの重力で相互作用し、その結果として一部の惑星が系外に弾き飛ばされる、というシナリオです。もう一つは孤独形成説です。恒星が生まれるのと同じ過程で、十分な質量を集められなかった天体が核融合に至れず、そのまま恒星にはなれずに独立した天体として宇宙空間に残る、というものです。どちらのシナリオが主流かは、まだ確定していません。
浮遊惑星は自ら光を放たず、照らしてくれる恒星もないため、観測が極めて難しい天体でした。それを可能にしたのが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)です。
2023年、JWSTが地球から約1,300光年離れたオリオン大星雲を観測した際、研究者たちは予想外のものを捉えました。約40組もの「ペアになった浮遊惑星」です。
この天体は**JuMBOs(Jupiter Mass Binary Objects、木星質量連星天体)**と命名されました。太陽系最大の惑星である木星に近い質量を持つガス惑星が、二つ一組となり、互いの重力のみで結びついた状態で星雲内を漂っていたのです。
二つの天体の間隔は、地球から太陽までの距離(約1億5,000万km)の数百倍とされており、非常にゆるやかな結びつきです。この二天体がお互いの周りを一周するのに、数千年から数万年かかると考えられています。
JuMBOs発見以降、最大の焦点は「なぜ二つが組になっているのか」という点です。
追放説をあてはめると、問題が生じます。惑星系から弾き飛ばされる際に、二つの惑星が組になったまま脱出できる確率は、計算上ほぼゼロに近いとされているからです。一方の孤独形成説でも、なぜ連星のように二つで形成されるのか、そのメカニズムはまだ解明されていません。
そこで近年では、「JuMBOsは既知の惑星でも恒星でもない、まったく新しい種類の天体ではないか」という仮説も提唱されるようになっています。現時点では、既存のどの理論も決定的な説明を与えられていないというのが正直なところです。
JuMBOsは恒星に温められる環境にないため、極低温の天体だと思われるかもしれません。しかしJWSTの分析では、表面温度がおよそ**1,000℃**に達するものがあると判明しました。これは天体が形成されてから日が浅く、誕生時に蓄えた熱がまだ内部に残っているためと考えられています。
宇宙空間は絶対零度(約マイナス273℃)に近い極寒でありながら、JuMBOs自身は赤外線を放つほどの熱を内部に保持している。光は出さないものの、熱は確かに存在する天体です。
JuMBOsの発見が示す可能性は、個々の天体の謎にとどまりません。たった一つの星雲で数十組が確認されたことは、銀河全体のスケールで考えたとき、太陽を持たない浮遊天体が想像以上に多数存在することを示唆しています。
また、この発見は惑星系の形成に関する理解そのものへの問い直しでもあります。恒星の周りに惑星が生まれるという「標準的な」モデルだけでは、宇宙に存在する天体の多様性を捉えきれていない可能性があります。
さらに研究者の間では、恒星の光に依存しない環境で生命の可能性を論じる議論も存在します。JuMBOsが内部熱を長期的にどの程度維持できるか、またそれが生命の成立にどう関係するか——これらはいずれも現時点では未解明であり、確認する手段もまだありません。
JuMBOsについて現時点で確認されていることを整理します。
一方、以下はまだわかっていません。
JuMBOsは、宇宙の惑星形成に関する既存の理解に明確な疑問を突きつける発見です。現在も世界各地の研究者が観測・理論両面からこの謎に取り組んでいます。
参考・情報源
本記事は、以下の公的機関・専門機関が公開する観測データや研究成果を参考に、 編集部が制作しています。最新の研究状況や一次情報については、 各機関の公式サイトもあわせてご確認ください。
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未知なる宇宙科学 ARCHIVES 編集部
NASA・ESA・JAXA・国立天文台などの公的機関が公開する観測データや研究成果をもとに、 宇宙科学のテーマをわかりやすく編集・制作しています。内容に誤りを見つけられた際は、 お問い合わせよりご指摘ください。
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