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ブラックホール公開 更新 1

260万年前、銀河中心は宇宙最大の輝きを放っていました。

編集・制作:未知なる宇宙科学 ARCHIVES 編集部

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260万年前、天の川銀河の中心が活動銀河核として輝いていた証拠

天の川銀河の中心、いて座の方角には、現在ほとんどエネルギーを放射していない超大質量ブラックホールが存在します。「いて座A*(エースター)」と呼ばれるこの天体は、太陽の約400万倍の質量を持ちながら、周囲のガスをほとんど取り込まず、宇宙のブラックホールとしては際立って静穏な状態にあります。

ところが、銀河の外縁には、この静穏な姿とは整合しない巨大な構造が刻まれています。それを読み解いた研究が、「260万年前、銀河中心は宇宙最大級の輝きを放っていた」という結論を導き出しました。

2010年に発見された「フェルミ・バブル」の概要

2010年、NASAのガンマ線観測衛星「フェルミ」が、銀河中心から銀河面の南北両方向に広がる巨大な高エネルギープラズマ構造を発見しました。「フェルミ・バブル」と呼ばれるこの構造は、片側だけで約2万5千光年、上下合わせると5万光年にわたります。天の川銀河の直径が約10万光年とされることを考えると、その半分に相当する規模です。

ガンマ線で観測されるこの構造は、通常光では見えませんが、もし肉眼でガンマ線を捉えられるなら、夜空の銀河面を挟んで対称に広がる二つの泡状の構造として見えるはずです。

その起源については当初から議論がありました。主な仮説は二つです。ひとつは銀河中心での爆発的な星形成(スターバースト)、もうひとつは**ブラックホールによる大規模なエネルギー放出(セイファート・フレア)**です。

「260万年前の爆発」説を支持する二つの観測証拠

フェルミ・バブルがブラックホール起源であるとする仮説には、独立した二つの観測が根拠として挙げられています。

証拠1:マゼラニック・ストリームの異常な電離

2013年、天文学者ジョス・ブランド=ホーソーンらの研究チームは、天の川銀河から約20万光年離れた「マゼラニック・ストリーム」というガスの流れに着目しました。このガスが、現在の銀河中心の活動量では説明できないほど強く電離して光っていることを確認したのです。

ガスの電離状態から逆算した結果、約260万年前(誤差範囲として200万〜300万年前ごろ)に、銀河中心から強烈な紫外線とX線の放射があったという推計が得られました。その明るさは現在のいて座A*の数百万倍に達すると計算されており、20万光年を隔てたガスをイオン化するに十分な強度だったとされています。

証拠2:フェルミ・バブルの形状・規模との整合性

研究者たちの試算によれば、フェルミ・バブルのような大規模構造を形成するには、銀河中心が短期間に膨大なエネルギーを解放する必要があります。その現象が「セイファート・フレア」です。セイファート銀河とは中心核が異常に明るく輝く銀河の総称であり、この現象が起きた期間、天の川は**活動銀河核(AGN)**として機能していたと考えられています。

フェルミ・バブルの構造とマゼラニック・ストリームの電離状態、それぞれ異なる手法で独立して求めた年代が「約260万年前」でほぼ一致したことが、この仮説の根拠となっています。

主な数値をまとめると以下のとおりです。

  • イベントの推定時期: 約260万年前(誤差範囲:200万〜300万年前)
  • 当時の明るさ(推定): 現在のいて座A*の数百万倍
  • 継続時間: 数十万年程度とされる
  • 証拠となった構造: フェルミ・バブルおよびマゼラニック・ストリームの電離状態

2020年の「eROSITAバブル」発見が示す新たな問い

2020年、ドイツ・ロシアが共同運用するX線望遠鏡「eROSITA(エロジータ)」が、フェルミ・バブルをさらに外側から包む大規模な構造を発見しました。「eROSITAバブル」と名づけられたこの構造は、差し渡し約4万5千光年と、フェルミ・バブルよりも大きく、両者は入れ子状になっています。

この発見は、銀河中心での大規模なエネルギー放出が一度だけでなく、過去に複数回あった可能性を示唆しています。ただし、それぞれの爆発の時期や規模、起源については現時点で十分に解明されておらず、継続的な研究が進んでいます。

現時点で確定していない点

以上の観測結果は説得力のある仮説を支持しますが、研究者の間でまだ合意が形成されていない論点もあります。

フェルミ・バブルの起源はひとつではない可能性があること。 ブラックホールのフレアによるものだけでなく、銀河中心部での爆発的な星形成(スターバースト)に伴う「銀河風」が寄与しているとする説も根強く残っています。フェルミ・バブルの全体が単一の原因で説明できるのか、それとも複数の機構が複合しているのかは、現在も議論が続いています。

次の活発化がいつ起きるかはわかっていないこと。 いて座A*の周辺には、やがて吸い込まれうるガス雲が複数確認されています。次のフレアがいつ起きるかを予測できる段階にはありません。

過去の閃光が地球の生命史に影響を与えたかどうかも未解明であること。 太陽系は銀河面のすぐ近くに位置しており、過去の高エネルギー放射が地球環境に何らかの影響を及ぼした可能性は議論されているものの、現時点で結論は出ていません。

観測の意味と現在の状況

260万年前という時代は、地質学的には鮮新世と更新世の境界にあたります。人類の系統ではアウストラロピテクスの時代が終わり、ホモ属が出現し始めた時期です。

観測技術の進歩により、私たちは現在から数百万年前の銀河の状態を、遠方のガス雲や高エネルギー構造を「証人」として間接的に読み取ることができるようになりました。フェルミ・バブルとマゼラニック・ストリームの電離状態という、まったく独立した二つの証拠が同じ年代を指し示しているという一致は、宇宙の過去を調べる上での方法論的な有効性を示す例としても注目されます。

いて座A*は現在も静穏な状態を保っています。しかし、その周囲に残された構造は、この天体がかつて全く異なる状態にあったことを記録しています。eROSITAバブルの発見が示唆するように、そのような活発化が過去に一度だけ起きたのか、繰り返し起きてきたのかも、今後の研究が明らかにしていく課題のひとつです。

参考・情報源

本記事は、以下の公的機関・専門機関が公開する観測データや研究成果を参考に、 編集部が制作しています。最新の研究状況や一次情報については、 各機関の公式サイトもあわせてご確認ください。

※ 当サイトの内容の正確性には万全を期していますが、 科学的知見は日々更新されます。最新かつ正確な情報は、上記の一次情報源をご確認ください。 編集方針の詳細は編集方針・運営者情報をご覧ください。

未知なる宇宙科学 ARCHIVES 編集部

NASA・ESA・JAXA・国立天文台などの公的機関が公開する観測データや研究成果をもとに、 宇宙科学のテーマをわかりやすく編集・制作しています。内容に誤りを見つけられた際は、 お問い合わせよりご指摘ください。

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