
人類最大の探査機が、いまエウロパの「海」へ向かっている。
エウロパ・クリッパー:木星の衛星エウロパに向かう探査機の現状と目的 この記事を読んでいる今も、探査機は宇宙を進んでいる…

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いま、あなたがこの文章を読んでいる瞬間にも、地球から約240億キロメートル離れた星間空間を、一機の探査機が飛び続けています。光の速さでも22時間以上かかる距離です。空気も光もなく、帰還の見込みもない場所で、半世紀近く前に人類が送り出したその機械は、わずかな電力を頼りに今も信号を発し続けています。
その探査機の名はボイジャー1号。1977年に打ち上げられた、人類がこれまでに最も遠くへ到達させた物体です。
ボイジャー計画が始まったのは1970年代のことです。当時、技術者たちはある天体配置に気づいていました。木星・土星・天王星・海王星という外惑星が、175年に一度しか訪れない直線状の並びに近づいていたのです。
惑星の重力を利用して次々と加速するスイングバイ航法を使えば、わずかな燃料で太陽系の外縁まで一気に到達できます。この機会を逃さないよう、1977年にボイジャー1号と2号が相次いで打ち上げられました。
両機はまず、私たちに太陽系の素顔を届けてくれました。木星の大赤斑が巨大な嵐であること。木星の衛星イオに活火山が存在すること。土星のリングが無数の細い帯の集合であること。これらはボイジャーが画像を届けるまで、誰も実際に「見た」ことのない光景でした。
1990年2月14日、当時すでに約60億キロメートル彼方にいたボイジャー1号は、天文学者カール・セーガンの提案により、カメラを反転させて地球の方角を撮影しました。
そこに写っていたのは、太陽光の散乱の帯の中に浮かぶ、わずか0.12ピクセルの青白い点でした。セーガンはこれを**「ペイル・ブルー・ドット(淡く青い点)」**と名付けています。私たちの歴史も文明も、すべてがその一粒の上にあるという事実は、宇宙における地球の位置を、数字ではなく視覚として示しました。
ボイジャー1号の旅における最大の節目は、2012年に訪れました。この年、人類史上初めて太陽圏(ヘリオスフィア)の外へ到達したとされています。
太陽は光だけでなく、太陽風と呼ばれる荷電粒子を絶え間なく宇宙へ吹き出しています。この太陽風が届く範囲が、太陽系全体を包む泡のような領域です。その境界——太陽風が星間空間の物質に押し負けて止まる地点を**「ヘリオポーズ」**と呼びます。
2012年8月25日、観測機器は明確な変化を捉えました。太陽から来る粒子の数が急減し、銀河系の彼方から来る宇宙線が約9.3%増加したのです。さらに周囲のプラズマ(電気を帯びたガス)の密度が、太陽圏内の約40倍にまで上昇しました。これらは、ボイジャーが**星間空間(インターステラー・スペース)**へ到達したことを示す根拠とされています。距離にして約180億キロメートル、光でも片道16時間以上かかる場所での出来事でした。
なお、各機には金色のゴールデンレコードが搭載されています。地球上の55の言語による挨拶、波の音や鳥のさえずり、バッハやチャック・ベリーの音楽、人類と自然を写した115枚の画像——もし遠い将来、知的生命体がボイジャーを発見したときのために用意されたメッセージです。再生方法の図解も添えられています。
ボイジャーを動かしているのはソーラーパネルではありません。太陽から遠すぎるため、**原子力電池(放射性同位体熱電気転換器、RTG)**を使用しています。プルトニウム238が崩壊する際の熱を電力に変える仕組みです。
ただし、この出力は毎年約4ワットずつ確実に低下し続けています。打ち上げ当初に約470ワットあった出力は、今や半分以下です。技術者たちは延命のため、観測機器やヒーターを段階的に停止させてきました。早ければ2025年から2030年頃にはすべての機器が沈黙すると見られています。
電力の問題だけではありません。ヘリオポーズを越えた先で観測された磁場の向きは、理論的な予測と一致していませんでした。星間空間に出れば磁場の方向が大きく変わると予想されていたにもかかわらず、実際には太陽圏の内外で磁場の向きがほとんど変わっていなかったのです。この点は、現在も完全には説明できていません。
一方、2017年には40年間使われていなかった姿勢制御用のバックアップエンジンの再起動に成功しています。また2024年には、通信トラブルで不正なデータしか送信できなくなったボイジャー1号に対し、技術者たちが数十年前のプログラムを解析して復旧させました。通信の往復に24時間以上かかる中で行われた、気の長い作業でした。
ボイジャー1号は現在、秒速約17キロメートルで遠ざかり続けています。約4万年後には、きりん座の方向にある恒星グリーゼ445から約1.6光年の距離を通過する見込みとされています。電力が尽きて信号が途絶えた後も、機体が物理的に壊れる要因は乏しく、何万年、何億年にもわたって銀河を漂い続けると考えられています。
私たちが直接行けない場所へ、知性と意志を込めた機械を送り届けた。その事実は、今も星間空間を漂うボイジャー1号の存在によって、具体的な形を持っています。
やがて電池が尽き、最後の信号が地球に届いたとき、私たちはこの探査機との通信を永遠に失います。しかしボイジャーの移動はそこで終わりません。沈黙した後も、ゴールデンレコードを搭載したまま、宇宙のどこかを飛び続けます。人類が宇宙へ送り出した物体として、現時点での最遠記録を保ちながら。
参考・情報源
本記事は、以下の公的機関・専門機関が公開する観測データや研究成果を参考に、 編集部が制作しています。最新の研究状況や一次情報については、 各機関の公式サイトもあわせてご確認ください。
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未知なる宇宙科学 ARCHIVES 編集部
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