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土星の200倍。リングが巨大すぎる惑星。

編集・制作:未知なる宇宙科学 ARCHIVES 編集部

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土星の200倍のリングを持つ系外天体 J1407b

土星のリングとは何か

リングを持つ惑星と聞いて、土星を思い浮かべる人がほとんどでしょう。1610年、ガリレオ・ガリレイが望遠鏡で土星を観測したとき、両脇に奇妙な突起を見つけて当惑した記録が残っています。当時の望遠鏡ではそれがリングだとは判断できず、その正体を「平らな輪」と正確に解釈したのは、約半世紀後のオランダの天文学者クリスティアーン・ホイヘンスでした。

その後の研究で、土星のリングは無数の氷や岩の粒——砂粒ほどから家ほどまで——が集まって形成されていることが明らかになっています。直径は約27万キロメートルに及び、地球から月までの距離(約38万キロ)に迫ります。一方でその厚みは平均わずか10メートル程度とされ、スケールに対してほぼあり得ないほど薄い構造です。

太陽系には木星・天王星・海王星にもリングがありますが、規模としては土星が突出しています。長らく土星のリングは、惑星のリングとしては最大級の存在と考えられてきました。しかし2012年、その前提を問い直す観測データが公表されました。

J1407bの発見:不可解な光の変化から

発見の端緒は、若い恒星「J1407」の光度変化でした。天体が恒星の手前を横切る現象「トランジット(食)」では、恒星の光がわずかに、そして短時間だけ暗くなります。惑星探索ではこの変化を検出しますが、通常は数時間以内に元の明るさへ戻ります。

ところが2007年のJ1407の観測データを解析すると、恒星の明るさは56日間にわたって複雑に増減を繰り返していました。単一の惑星が通過した場合には起こりえないパターンです。

オランダのライデン天文台とアメリカのロチェスター大学の研究チームは、この光度変化のパターンを詳細に解析しました。その結果、恒星の前を横切ったのは惑星本体ではなく、その惑星を取り巻く大規模なリングシステムである、という解釈が導かれました。この天体が「J1407b」です。

J1407bのリングの規模と構造

観測データから推定されたJ1407bのリングの特徴は以下のとおりです。

  • リングの直径:約1億2,000万キロメートル — 土星のリングのおよそ200倍
  • 比較: 太陽から地球までの距離(1天文単位=約1億5,000万キロ)に近い広がり
  • リングの層数: 少なくとも30以上のリングが確認されたとされています
  • リングの総質量: 地球の月に匹敵すると推定されています

もしこのリングシステムが土星の位置に存在したなら、地球から見た際に満月の数十倍の見かけの大きさになると計算されています。

リングとリングの間には明確な「隙間(ギャップ)」も確認されました。土星の「カッシーニの間隙」が内側を公転する衛星の重力によって形成されているように、J1407bのリングの隙間も、軌道上で形成されつつある衛星(エクソムーン)の存在を示唆すると研究者たちは考えています。

未解決の問題:天体の正体とリングの安定性

J1407bについては、現時点でも確定していない事項が複数あります。

まず中心天体の性質です。研究者たちは、J1407bの本体が「巨大ガス惑星」か、恒星になれなかった天体である「褐色矮星」のどちらかとみています。褐色矮星とは、木星より大幅に重いものの、内部で水素の核融合反応を持続させるには質量が不足し、恒星として発光できない天体です。J1407bの質量は木星の約13倍から26倍の範囲と推定されており、惑星と褐色矮星の境界領域に位置しています。

次にリングの安定性の問題があります。これほどの規模のリングが長期にわたって安定して維持されるかどうかは、理論的には疑問視されています。中心天体の自転や衛星との重力的相互作用によって、時間とともにリングは崩壊していくと考えられるためです。

研究を主導したマシュー・ケンワージーらは、リングが時計回りに回転していると仮定すると物理的に安定しやすいと指摘しています。また現在のリングは、やがて崩壊してその物質が衛星へと集積していく「過渡期」の姿である、という見方も有力です。

惑星形成の初期段階を見ているという仮説

J1407bの観測が注目される理由の一つは、惑星形成の初期過程を現在進行形で観測できる可能性があるためです。

科学者の中には、若い時期の木星や土星もかつてはこれほど大きなリングを持っていたのではないか、と推測する人もいます。惑星が形成されたばかりの時期には、周囲にガスと塵の円盤が存在し、それらが集まって衛星となり、リングは徐々に消えていったと考えられています。J1407bはその過程を今まさに示している天体である可能性があります。木星が現在90個を超える衛星を持つのも、かつて存在したリング起源の物質が集積した結果と見ることができます。

ただしこれは仮説であり、J1407b自体の確証もまだ不完全であることは強調しておく必要があります。

次回のトランジット観測と今後の課題

J1407bが次にトランジットを起こすと予測される時期は、2024年から2027年頃とされています。世界の天文学者たちはアマチュア観測家とも連携しながら、その再観測の機会に備えています。

今回の観測データは2007年の単一イベントに基づいており、リングシステムの全体像を確定するにはさらなる観測が不可欠です。J1407bが「系外天体としてのリングシステム」として正式に確立されるには、次回トランジットでの詳細なデータが鍵になります。

土星の200倍というリングの規模と、形成途上と考えられる構造——J1407bは、惑星系がどのように進化するかを探るうえで重要な観測対象です。現時点でわかっていることと、まだわかっていないことを区別しながら、この天体の研究の行方を追っていく価値があります。

参考・情報源

本記事は、以下の公的機関・専門機関が公開する観測データや研究成果を参考に、 編集部が制作しています。最新の研究状況や一次情報については、 各機関の公式サイトもあわせてご確認ください。

※ 当サイトの内容の正確性には万全を期していますが、 科学的知見は日々更新されます。最新かつ正確な情報は、上記の一次情報源をご確認ください。 編集方針の詳細は編集方針・運営者情報をご覧ください。

未知なる宇宙科学 ARCHIVES 編集部

NASA・ESA・JAXA・国立天文台などの公的機関が公開する観測データや研究成果をもとに、 宇宙科学のテーマをわかりやすく編集・制作しています。内容に誤りを見つけられた際は、 お問い合わせよりご指摘ください。

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