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2つの惑星が「衝突する瞬間」を人類が目撃した。

編集・制作:未知なる宇宙科学 ARCHIVES 編集部

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2つの惑星が衝突した痕跡を、天文学者たちはどう読み解いたか

夜空の星々は、何千年前の人々が見上げたものと同じ配置に見えます。北極星は今も北の空に輝き、星座の形は変わらない。宇宙とは静かで安定したものだ、という印象は、日常感覚としてきわめて自然です。

しかし2023年、その印象を大きく揺さぶる観測結果が報告されました。天文学者たちが初めて、2つの惑星サイズの天体が衝突した直後の痕跡を、リアルタイムに近い形で捉えることができたのです。

惑星形成は穏やかなプロセスではない

惑星がどのように誕生するかについて、現代の天文学はおおよそ次のように理解しています。生まれたばかりの恒星の周囲には、ガスと塵からなる原始惑星系円盤が広がり、塵が少しずつ集積して岩石天体となり、やがて惑星へと成長していく。

ただし、このプロセスは決して穏やかではありません。成長途中の天体(微惑星)どうしが高速で衝突と合体を繰り返しながら、巨大な惑星が形成されていきます。地球の月も、約45億年前に火星程度の大きさの天体テイアが原始地球に衝突した際の破片から生まれたとする「ジャイアント・インパクト説」が有力です。

つまり惑星衝突は宇宙の異常事態ではなく、惑星形成の通常のプロセスの一部と考えられています。ただ、実際の衝突をリアルタイムで観測した例はこれまでありませんでした。

ASASSN-21qj:2つの異常な光変化が示したもの

今回の観測対象は、地球から約1,800光年離れた恒星ASASSN-21qjです。太陽とほぼ同じ質量を持つ、比較的ありふれた星です。

2021年12月、この恒星の可視光(目に見える光)が突然暗くなり始め、その状態が約500日間続きました。何らかの物体が恒星の光を遮っているように見えました。

研究チームがNASAの赤外線宇宙望遠鏡NEOWISEの過去データを調べると、重要な事実が浮かび上がりました。可視光の減光が始まる約900日(およそ2年半)前から、すでにこの恒星の赤外線が異常に増光していたのです。

この2つの現象の「順序」が、解釈の鍵になります。

  • 赤外線の増光(先): 高温の物体が新たに生まれ、熱を放射していた
  • 可視光の減光(約2年半後): 生成された物体とその破片が、地球から見て恒星の手前を横切った

研究者たちはこのデータから、この恒星の周囲で2つの惑星サイズの天体が正面衝突を起こしたという結論を導きました。

衝突の痕跡として観測されたもの

衝突の際に膨大なエネルギーが解放され、2つの天体は溶融して高温の塊となったとされます。研究によれば、この**「衝突後残骸(post-impact remnant)」の温度は摂氏700度**程度に達していたとみられ、これが赤外線増光の原因と考えられています。

その後、衝突によって飛び散った溶融した岩石とデブリの雲が軌道上に広がっていき、それが地球から見て恒星の手前を通過したことで、可視光が不規則に遮られた。

衝突した天体の質量については、地球質量の数倍から数十倍程度、海王星から土星クラスの巨大な惑星だった可能性が示されています。ただし、これは観測データから推定した値であり、より詳細な分析は今後の観測に委ねられています。

まだわかっていないこと

この観測は画期的な成果ではありますが、未解明の部分も多く残っています。

  • 衝突した2天体のそれぞれの正確な大きさと質量
  • 衝突の結果が完全な破壊だったのか、それとも合体して一体化したのか
  • このような惑星どうしの衝突が、宇宙全体でどの程度の頻度で発生しているのか

特に3点目は、天文学的に重要な問いです。もし惑星衝突が宇宙で頻繁に起きているとすれば、私たちはこれまで無数の衝突事例を観測できないまま見過ごしてきた可能性があります。

今後の観測で何がわかるか

衝突で生まれた高温の残骸は、これから数百年から数千年をかけて冷却していくと予測されます。また周囲に広がったデブリの雲は、恒星の周りを回りながら引き伸ばされ、やがて塵の円盤を形成すると考えられています。その塵の中から、かつての月の形成と同様に、新たな衛星が誕生する可能性も研究者たちは指摘しています。

研究チームは引き続きASASSN-21qjを観測することで、惑星衝突の「その後」をリアルタイムで追跡できると期待しています。また、**LSST(ヴェラ・ルービン天文台)**のような次世代の全天サーベイ望遠鏡が稼働すれば、第2・第3の事例を系統的に発見できるようになるかもしれません。

この発見が持つ意味

ASASSN-21qjで観測されたプロセスは、46億年前の太陽系形成期にも起きていたと考えられます。私たちが夜ごと目にする月も、同様の惑星衝突の産物です。宇宙の「今」を観測することが、太陽系の歴史を理解する手がかりにもなり得ます。

宇宙は静止していません。惑星規模の衝突が起きても、距離と時間のスケールが大きすぎて、地球からは静止しているように見えるだけです。天文学はこうした事象を捉えるための観測技術を少しずつ整えてきており、今回の観測はその一つの到達点です。ASASSN-21qjの観測を通じて、惑星衝突という現象の実態がより具体的に解明されていくことが期待されます。

参考・情報源

本記事は、以下の公的機関・専門機関が公開する観測データや研究成果を参考に、 編集部が制作しています。最新の研究状況や一次情報については、 各機関の公式サイトもあわせてご確認ください。

※ 当サイトの内容の正確性には万全を期していますが、 科学的知見は日々更新されます。最新かつ正確な情報は、上記の一次情報源をご確認ください。 編集方針の詳細は編集方針・運営者情報をご覧ください。

未知なる宇宙科学 ARCHIVES 編集部

NASA・ESA・JAXA・国立天文台などの公的機関が公開する観測データや研究成果をもとに、 宇宙科学のテーマをわかりやすく編集・制作しています。内容に誤りを見つけられた際は、 お問い合わせよりご指摘ください。

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