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系外惑星公開 更新 1

空に「2つの太陽」が輝く惑星。

編集・制作:未知なる宇宙科学 ARCHIVES 編集部

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空に太陽が2つある惑星 — 「周連星惑星」の発見が示すもの

夕暮れ時、地平線に沈んでいくのは1つではありません。大きく赤い太陽と、その隣に寄り添う小さく青白い太陽。2つの恒星がわずかに角度をずらしながら沈んでいく。足元には自分の影が2本伸びている。濃い影と薄い影が、重なり、ずれながら動いていく。

これはSF映画のワンシーンではありません。私たちの銀河には、こうした「2つの太陽を持つ世界」が確かに存在しています。

恒星の半数は「連星」である

「太陽は1つ」というのが私たちには自然な前提ですが、宇宙全体を見渡すとその常識は揺らぎます。

天文学の観測によれば、天の川銀河に存在する恒星のうち**およそ半数は「連星(れんせい)」**です。2つ以上の恒星が互いの重力で結びつき、共通の重心を巡り合う系のことです。質量の大きな恒星ほどこの傾向は強く、太陽より重い星では7割以上が連星をなすという推定もあります。

つまり、太陽がたった1つである私たちの太陽系は、宇宙ではむしろ少数派に近い可能性があります。

かつては「存在できない」と考えられていた

「2つの太陽が沈む星」と聞いて、ある映画の砂漠の惑星を思い浮かべた方も多いでしょう。1977年公開のその作品で、主人公が故郷の地平線に沈む2つの夕日を見つめるシーンは、映画史に残る象徴的な場面として知られています。

当時、それは純然たる空想でした。連星の周りを巡る惑星が本当に存在するのか、誰も確かめていなかったからです。理論家の中には「2つの恒星が生み出す複雑な重力が惑星を弾き飛ばしてしまうため、安定した軌道は描けない」と考える者も少なくありませんでした。

ところが宇宙は、その想定を静かに裏切ることになります。

ケプラー16b — 「周連星惑星」の実在を示した発見

2011年、NASAの宇宙望遠鏡が地球からおよそ200光年離れた場所に、2つの太陽を巡る惑星を発見しました。ケプラー16bと名付けられたこの天体がその証拠です。

2つの恒星のまわりをまとめて公転する惑星を、天文学では**「周連星惑星(circumbinary planet)」**と呼びます。ケプラー16系の構造は次のとおりです。

  • 中心の2つの恒星: 一方は太陽の約7割の質量を持つ恒星、もう一方は太陽の約2割しかない赤く小さな恒星(赤色矮星)
  • 2つの恒星の公転周期: 約41日で互いを周回
  • 惑星ケプラー16b: 土星ほどの大きさを持つガス惑星で、2つの恒星を約229日周期でまとめて公転

この惑星から見上げれば、空には大きさも色も異なる2つの太陽が輝いています。2本の影の濃さは2つの太陽の位置関係によって刻々と変わり、ときに1本に重なり、ときに扇のように開く。それがこの星では日常の光景です。

なぜ惑星の軌道は安定できるのか

2つの恒星が動き回っているにもかかわらず、なぜ惑星が弾き飛ばされないのか。鍵は距離にあります。

周連星惑星が安定して存在するには、2つの恒星のペアから十分に離れた一定距離の外側を回る必要があります。理論的には、2つの恒星の間隔のおよそ2〜4倍以上離れていれば、惑星は2つの恒星を「ひとつのまとまった重力源」として感じられるようになるとされています。

近くで2人がダンスを踊っている場面を遠くから眺めるようなものです。すぐ傍にいれば2人の動きはバラバラに見えますが、十分な距離を取れば「ひとつの集団」として動いて見えます。惑星も十分遠くから巡ることで、2つの恒星をひとつの安定した中心として周回できるわけです。

生命居住可能領域(ハビタブルゾーン)との関係

恒星の周りには、水が液体で存在できる適度な温度の領域があります。生命の存在が期待できる**「ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)」**と呼ばれる領域です。

連星系では、このゾーンの位置は2つの恒星のエネルギーを合わせて決まります。2019年以降に発見された周連星惑星の中には、ハビタブルゾーンの内側あるいはその縁を巡るものも見つかっています。2つの太陽の光を受けながら、生命が存在できる条件を満たすかもしれない世界の候補が、現実のものとして現れてきているのです。

発見数の増加と、残された謎

ケプラー16b以降、周連星惑星の発見は続いています。後継ミッションや地上の大型望遠鏡による観測の進化によって、確認された数は十数個を超え、その多様性も明らかになってきました。

注目すべき例のひとつがTOI-1338系で見つかった惑星です。この発見に貢献したのが当時17歳の高校生インターンだったという経緯も話題を呼びました。さらにこの系では後に2つ目の惑星の存在も示唆され、「2つの太陽」と「複数の惑星」が共存する系の実在が見えてきています。

しかし、発見が増えるほど新たな問いも生まれています。

**最大の未解決問題は「これらの惑星はどこで生まれたのか」**という点です。惑星は若い恒星を取り巻く塵とガスの円盤(原始惑星系円盤)の中で誕生します。ところが連星の周囲では、2つの恒星の重力がこの円盤をかき乱し、惑星の材料となる物質が衝突して壊れやすくなると考えられています。そのような環境でどうやって惑星が成長できたのか、多くの研究者は「もっと外側の穏やかな場所で生まれ、後から現在の軌道へ移動してきたのではないか」と推測していますが、決定的な答えはまだ出ていません。

さらに2020年代の観測は、別の驚きをもたらしました。一部の周連星惑星が、2つの恒星の公転面に対して**大きく傾いた軌道(極軌道に近い軌道)**を描いていることがわかってきたのです。地球が太陽の赤道面とほぼ同じ面を回っているのとは対照的に、これらの惑星は2つの恒星が公転する面を縦に貫くように巡っています。なぜそのような軌道が生まれ、しかも安定して存在できるのか。これは惑星形成理論そのものに再考を迫る、現在進行形の問いです。

「ひとつの太陽」という特殊性

周連星惑星の研究が進むほど、私たちの太陽系がいかに穏やかな環境にあるかが際立ってきます。ひとつの安定した太陽、適度に傾いた地軸、規則正しく巡る四季——当たり前すぎて意識しない条件のひとつひとつが、生命を育む上での特殊な組み合わせだったと気づかされます。

宇宙の標準から見れば、2つの恒星に照らされる世界の方がむしろありふれているかもしれない。その視点を持つだけで、「なぜここに生命があるのか」という問いはずっと具体的な問いに変わります。

まとめ — わかったことと、まだわからないこと

現時点でわかっていることを整理します。

  • 連星は銀河の恒星の約半数を占め、2つの太陽を持つ惑星(周連星惑星)は実在する
  • ケプラー16bをはじめ、十数個以上の周連星惑星が確認されており、中にはハビタブルゾーン付近を巡るものも含まれる
  • 惑星が安定して存在できるのは、連星から十分離れた軌道に限られると理論・観測の両面から示されている

一方で、まだわかっていないことも多くあります。

  • 連星のような激しい重力環境でどのように惑星が形成されるのか
  • 極軌道に近い大きく傾いた軌道がなぜ生まれ、維持されるのか

これらの謎は現在も観測と理論の両面から研究が続いています。「2つの太陽を持つ世界」は、単なる珍しい天体の話ではなく、惑星がどのように生まれるかという根本的な問いに直結する研究対象です。200光年の彼方で今この瞬間も続いているその二重の夕日は、宇宙の仕組みについて私たちにまだ多くのことを教えてくれるはずです。

参考・情報源

本記事は、以下の公的機関・専門機関が公開する観測データや研究成果を参考に、 編集部が制作しています。最新の研究状況や一次情報については、 各機関の公式サイトもあわせてご確認ください。

※ 当サイトの内容の正確性には万全を期していますが、 科学的知見は日々更新されます。最新かつ正確な情報は、上記の一次情報源をご確認ください。 編集方針の詳細は編集方針・運営者情報をご覧ください。

未知なる宇宙科学 ARCHIVES 編集部

NASA・ESA・JAXA・国立天文台などの公的機関が公開する観測データや研究成果をもとに、 宇宙科学のテーマをわかりやすく編集・制作しています。内容に誤りを見つけられた際は、 お問い合わせよりご指摘ください。

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