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系外惑星公開 更新 1

400度なのに「氷」で覆われた星が実在する。

編集・制作:未知なる宇宙科学 ARCHIVES 編集部

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400度なのに内部が氷で覆われている可能性がある惑星——グリーゼ436b

「灼熱」と「氷」が同じ天体に共存する、その仕組み

地表温度が摂氏400度近くに達するとされる惑星が、内部に氷を抱えている可能性がある。この一文だけ読むと矛盾に聞こえますが、これは物理学が認める現象です。地球から約30光年先に実在する系外惑星「グリーゼ436b」は、そうした「熱い氷」の惑星の候補として研究者から注目されています。

なぜ高温でも氷が存在できるのか。その答えは、物質の状態を決めるのが温度だけではない、という点にあります。

物質の状態は「温度」と「圧力」の両方で決まる

水は0度で凍り、100度で沸騰する。私たちが日常的に知っているこの挙動には、暗黙の前提があります。それは「地球の気圧のもとで」という条件です。

物理学では、温度と圧力に応じて物質がどの状態(固体・液体・気体)をとるかを示した図を「相図(そうず)」と呼びます。相図を見ると、十分に高い圧力をかければ、温度が高くても水が固体のままでいられる領域があることがわかります。つまり、「高温でも圧力で押し固められた氷」は、理論上あり得る存在なのです。

高圧下で発見された「氷」の種類

1900年代初頭、物理学者パーシー・ブリッジマンは高圧実験を重ね、私たちの知る普通の氷(氷Ih)とは異なる結晶構造を持つ「氷II」「氷III」「氷V」「氷VI」などの高圧の氷を次々と発見しました。彼はこの功績により1946年のノーベル物理学賞を受賞しています。

なかでも注目されるのが「氷VII」と呼ばれる相です。これは数万気圧という極端な高圧下で安定して存在できる氷であり、室温をはるかに超える高温でも固体のままでいられます。

「氷=冷たい」という私たちの感覚は、地球という比較的穏やかな環境に最適化された、かなり限定的な認識だったと言えます。

グリーゼ436b——「燃える氷」の惑星候補

しし座の方向、約30光年先に浮かぶ系外惑星「グリーゼ436b(GJ 436 b)」は、2004年に発見されました。海王星ほどの大きさを持つ、いわゆる「ホット・ネプチューン(灼熱の海王星型惑星)」です。赤色矮星のすぐそばをわずか2.6日で1周するという、非常に恒星に近い軌道を回っています。

この惑星の表面温度は推定で摂氏400度近くに達するとされています。通常の状況なら水は即座に蒸発し、氷は存在できません。しかしグリーゼ436bは質量が地球の約22倍あります。この大きな重力が惑星内部の水を強烈な圧力で押し固め、深部では高温のまま固体化した氷VIIのような高圧の氷が核を覆っている可能性が研究者によって指摘されています。

研究者たちはこの天体を「バーニング・アイス(燃える氷)の惑星」と呼ぶことがあります。ただし、これはあくまで観測データと理論モデルに基づく推定であり、内部構造が直接確認されているわけではありません。

軌道の歪み、大気の蒸発、組成の謎

グリーゼ436bに関する謎は、内部構造にとどまりません。観測を重ねるほど、新たな問いが生まれてきます。

軌道が傾いており、楕円を描いている

恒星のごく近くを回る惑星は、通常は潮汐力によって軌道が真円に整えられます。しかしグリーゼ436bの軌道は恒星の自転に対して大きく傾き、楕円を描いています。この歪んだ軌道がなぜ保たれているのか、明確な説明はまだありません。未発見の惑星が重力的に干渉しているのではないか、という仮説もあります。

惑星の50倍に及ぶ水素の尾

2015年、ハッブル宇宙望遠鏡の観測で、グリーゼ436bが恒星の放射によって大気中の水素を宇宙空間に吹き飛ばされており、惑星の50倍にもおよぶ巨大な水素ガスの尾を引いていることが確認されました。惑星自体がゆっくりと蒸発し続けている状態であり、彗星に似た外観を呈しています。

メタンが少なく、一酸化炭素が多い大気組成

この温度帯の大気には、理論上は大量のメタンが含まれているはずです。ところが観測では、メタンはほとんど検出されず、代わりに高温条件下でなければ生じにくい一酸化炭素が豊富に見られました。この「メタン欠乏」の原因については、まだ十分な説明がなされていません。系外惑星の大気化学に関する現在の理解の限界を示す例として、研究者の間で議論が続いています。

近年はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の高精度な分光観測によって、こうした惑星の大気を分子レベルで詳しく調べることが可能になりました。今後の観測でこれらの謎が解き明かされていくことが期待されています。

「水は0度で凍る」は地球限定のルールだった

グリーゼ436bが示していることは、私たちが「常識」として持っている自然法則の多くが、地球という特定の環境でのみ成り立つ局所的なルールにすぎない可能性がある、ということです。

温度と圧力の組み合わせを変えれば、水は高温のままでも固体になります。それが惑星規模で起きた可能性があるのがグリーゼ436bです。

この視点は、生命が存在できる環境を考える上でも重要です。「水は低温でなければ液体や固体にならない」「生命は穏やかな環境にしか宿れない」という前提を問い直すことで、これまで候補から外していた天体が、新たな探索対象として浮かび上がることもあるかもしれません。

グリーゼ436bはまだ謎の多い天体です。「熱い氷を持つ」という描像が正しいのかどうかも、今後の観測次第でより明確になるでしょう。宇宙について私たちが「わかっている」と思っていることが、まだどれほど狭い視野に基づいているか。この一つの惑星が、その問いをあらためて突きつけています。

参考・情報源

本記事は、以下の公的機関・専門機関が公開する観測データや研究成果を参考に、 編集部が制作しています。最新の研究状況や一次情報については、 各機関の公式サイトもあわせてご確認ください。

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未知なる宇宙科学 ARCHIVES 編集部

NASA・ESA・JAXA・国立天文台などの公的機関が公開する観測データや研究成果をもとに、 宇宙科学のテーマをわかりやすく編集・制作しています。内容に誤りを見つけられた際は、 お問い合わせよりご指摘ください。

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